昔から就職するなら「いい企業」に入りたいのは当然です。明日をもしれない中小企業や激務薄給、サービス残業当たり前のブラック企業には誰も進んで勤めたいとは思いません。看護師を選ぶ若い人たちとしても、なるべく「いい病院」を選びたいと思うものです。その「いい病院」がどんなものかは個人の感覚の違いもありますが、やはり最新の設備を備えた大きな病院、給料のいい所、残業の少ない所などは人気がああるでしょう。さらに、最近の若手看護師は職場を選ぶ際にその病院の研修制度がしっかりしているかを重視する傾向もあります。
研修制度以外にも、より働きやすいシステムを導入しているかにも注目が集まっていて、現在若手が注目している制度の一つがPNS(Partnership Nursing System)です。 PNSとは、二人の看護師がペアを組んで複数の患者のケアに当たるという看護方式です。この方式はペアを組んだ二人の看護師がお互いの看護技術や知識を共有し効率的に患者の対応をしていく、ということが大きな特徴となっています。一人ではなく、二人で看護を行うことで不安な事を相談することもでき、難しい処置もスムースに行えるというメリットがあり、最近では多くの病院が導入しています。病院側としても、こうした新しい制度を導入していると新人からの人気も出やすいのでますますPNSが広まっている状況です。
しかし、このPNSもメリットばかりというわけではないようです。看護師が二人でペアを組むという性質上、どうしてもお互いの相性という問題が発生します。また、二人の力量に差がありすぎても駄目で、誰でもいいから二人組になればいいというものでもありません。この制度を開発した病院は地方の病院であり、退職者も都会ほどは多くなく、人間関係も円満に行われています。そうした現場ではこの制度は十分に効果を発揮できますが、離職者の多い都会の病院では難しい部分が多いようです。特に都会の病院は離職率が高くペアを作ってもすぐに相手が変わってしまうこともあり、二人の間に技量の差がありすぎれば仕事ができる方の負担が増え、そうでない方は取り残されてしまうことにもなってしまいます。さらに、元々職場の人間関係があまり良くない所へこの制度を持ってくればその意義自体が崩壊してしまいます。実際にPNSを導入している病院の看護師も、厳しい先輩や気の合わない人と一緒になるときは大変だと言います。一部でPNSを導入している病院でも「PNSをやっている病棟に一日応援に行くんだけどちょっと大変。しかも誰々さんと一緒なんで憂鬱」という声も上がっているそうです。
PNS自体は優れた考え方に基づくシステムですが、理屈を聞けばどこにでもすぐ適用できるほど簡単なものではないようです。今後のPNSの導入には病院ごとの環境やスタッフの意見を十分考慮してさらによりよい形にしていくべきだと思われます。